こちらは先日、利尻島沖で撮影した写真です。北側から南の方角を見ています。
写真1 利尻島沖からの利尻山とそこで発生する雲
利尻山の右側には雲があり、左側には雲がありません。右側は西から南西の方角になりますが、この日は南西風が吹いていました。利尻山の南西側には日本海が広がっています。日本海の上を渡ってきた空気は、海上から水蒸気を得て湿った空気に変わっていきます。
図1 利尻島で南西風が吹くときの状況
さらに、北海道沖の日本海では、6月になると海水温は上空の空気より冷たくなり、この水蒸気が冷やされて雲になっていきます。この雲が利尻山に入ってきたとき、山の斜面で上昇して雲を成長させます。
写真2 山を挟んで天気が異なる理由
一方、利尻山を越えると空気は山の斜面に沿って下っていき、空気は温められていくため、雲は蒸発します。そのため、山を挟んで風上側と風下側で天気が大きく異なるのです。南西風が吹くと、利尻島では山の風下側に入る鴛泊など北東側で天気が良くなり、沓形など日本海から湿った空気が入る西側では天気が悪くなります。一方、礼文島は利尻山という湿った空気を防いでくれるものがないため、雲がかかります。
このように、山を挟んで天気が異なるのは利尻島だけでなく、すべての山に言えることです。特に、アルプスや八ヶ岳など山脈が連なっているところでは、湿った空気も風下側に入りにくいので、天気の違いが際立つのです。
「トンネルを抜けるとそこは雪国だった。」この言葉がそれを端的に表していますね。
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
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