先日、北海道の利尻山で吊るし雲が見られました。この雲は、強い風が山を越えるときに波を作り、山の風下側に波が伝わっていくときの上昇気流でできる雲です。
写真1 利尻山で見られた吊るし雲
同じような原理で発生する雲にレンズ雲があります。この雲について、雲のワンポイント講座で解説していますので、興味のある方は読んでみてください。
https://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/2c69d155ba8d1c085be3aafce477f429
レンズ雲と吊るし雲は形が異なります。レンズ雲は滑らかな凸レンズ状の形をしていますが、吊るし雲は独特な形をしています。これは単に、風が山を越えたときにできる波だけでなく、波の下側に複雑な気流が生まれることで、独特な雲の形になります。この雲は地震雲と間違えられることもありますが、地震とは関係ありません。
図1 吊るし雲ができる仕組み
レンズ雲はアルプスや八ヶ岳など山脈によってもできますが、吊るし雲は、利尻山や富士山など、独立峰でしか見ることができません。滑らかな気流でできるレンズ雲に対して、吊るし雲は空気の激しい上下動や複雑な気流がないとできないからです。
また、吊るし雲はコロコロと形を変えていきます。風の強さや気流、空気の湿り具合が変化すると、雲の形が変わるからです。このときも色々な形の雲が見られました。
写真2 さまざまな形の吊るし雲
さて、この日はもうひとつ、興味深い雲が見られました。アスペリタスと呼ばれる雲です。ラテン語で“荒々しい”という意味の通り、雲の底が波打って不気味な感じの雲です。近くで雨が降っているときや、気流が激しく乱れているときに見られます。
写真3 利尻山で見られたアスペリタス
写真4 フェリーから見られたアスペリタス
吊るし雲もアスペリタスも複雑な気流の中で生み出される雲です。海の波にも色々な波があり、ときに三角波など特徴的な波が生まれるように、空気も波打つことがあります。特に強い風が山にぶつかると、複雑な波が生まれるのです。それを教えてくれているのが雲なんですね。
文責:猪熊隆之