空の百名山連載九州・沖縄

第43回 見事な彩雲 規模と彩りに興奮 ~韓国岳(鹿児島県・宮崎県)~

山に登ることは空に近づくこと。

今回ご紹介するのは、南九州の韓国岳(からくにだけ標高1,700m)です。韓国岳は、今なお活発な火山活動を続けている霧島連山の最高峰です。私は、旅行会社で山の天気を現場で学ぶツアーを実施しています。2月は霧島連山と開聞岳でおこないました。登山口からスタートしてすぐにやや開けた場所に出ますが、そこで目を疑う光景が飛び込んできました。彩雲(さいうん)が韓国岳の上空に浮かんでいたのです。

 

写真1 韓国岳上空の彩雲

彩雲というのは、太陽の光が雲粒を回り込むときに、赤色やピンク色など色が分かれて見られる現象で、古くから吉兆の兆しとされてきました。彩雲自体はそれほど珍しい雲ではありませんが、今回見られた彩雲の規模と彩りの美しさは、私がこれまで見た中でも1、2位を争うほどで、「これはお客様に素晴らしい幸運がやってくる」と興奮を抑えきれませんでした。

これほど美しい彩雲が見られたのは、いくつか要因があります。ひとつは、この日は山頂付近の風が強く、山岳波と呼ばれる空気の波が韓国岳上空で発生し、それが雲を作りました。そして、太陽がちょうど山頂の上空にあるときに、この雲ができたので見事な彩雲になりました。

もうひとつは、硫黄山の火山ガスの影響です。雲は空気中の水蒸気が冷やされて水滴や氷の粒になることによって発生しますが、何もない清浄な空気中ではなかなかできません。雲の核となるエアロゾルと呼ばれる粒子がないと、雲はすぐに消えてしまいます。火山ガスはエアロゾルになりますので、この日は乾いた空気が流れ込んでいたにもかかわらず、霧島山上空で雲ができたのです。

 

写真2 硫黄山の噴煙

 

この日は、午後になると層積雲(そうせきうん、別名うね雲)と呼ばれる雲が現れました(写真3)。

写真3 午後になると、層積雲が広がった

午前中は、前述の彩雲が朝のうちに出ただけで快晴でした。この天気の変化は風向きの変化によるものです。この日のように、冬の時期は冬型の気圧配置が良く現れます。そうなると、シベリア方面から北西の季節風が吹きます。この風は暖かい東シナ海を渡る間に、下の方は温められていきますが、上空はシベリアからの冷たい空気なので、上下で温度差が大きくなります。そのときに生まれる雲が層積雲です。この雲は風向きによって入る場所が異なります。

 

図1 北北西風

 

図2 北西風から西北西風になると、霧島連山にも雲がかかるようになる

 

図1のように北~北北西風のときは、東シナ海からの雲は薩摩半島方面にかかりますが、北西~西北西風だと霧島連山にもかかるようになります。この日は、午前中は北風でしたが、午後は北西風に変わったので、層積雲が広がるようになったのです。

韓国岳は火山の影響で森林限界が低く、空が広く開けているため、このように風向きによる天気の変化を見つけやすく、空を見るのが楽しくなる山です。

 

〇おすすめコース

えびの高原から往復でも良いですが、下山は大浪池に立ち寄ると、池に映る青空や雲を眺められて、一味違った空見(そらみ)を楽しめます。

文、写真:猪熊隆之

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