山に登ることは空に近づくこと。
前回に引き続き、エベレストで見られた雲の紹介です。今回は、登頂を目指しているときに見られた雲や神秘的な現象についてご紹介します。
写真1 ローツェ上空に現れた暈(英名:ハロ)とベール雲(下の写真の矢印参照)
最初にご紹介するのは暈(かさ:英名ハロ)です。暈は巻層雲(けんそううん)と呼ばれる氷の結晶でできた薄い雲が太陽の周りを覆うときに現れます。氷の結晶がプリズムの役割を果たして色が虹色に分かれて見えます。昔から「暈が見られると天気は下り坂」と言われますが、西の空に暈が見えるときや、暈が他の方角で見られ西の空に薄雲やおぼろ雲が広がっているときは、ことわざ通り、天気が崩れていくことが多くなります。
一方、ベール雲は通常、発達中の積乱雲の上にできる頭巾雲が水平方向に大きく広がった雲で、複数の積乱雲の上に流れるような曲線を描いてできるベールのような雲です。日本では、ベール雲が見られるときは、急な雷や強い雨、ひょうなどに注意が必要ですので、覚えておくといいでしょう。
写真2 C1(6,050m)で見られたローツェ上空の環水平アーク
次は「環水平アーク」という現象が見られました。虹色の帯が太陽から手のひら2個分下に現れる現象です。こちらもハロと一緒で氷でできている雲に太陽の光が屈折することで虹色が現れます。ハロは氷の粒がバラバラの向きになっていますが、こちらは薄い氷の粒が水平に浮かんでいるときに見られる現象です。
写真3 同じような雲が連なる波状雲(はじょううん)
山の上に同じような雲が連なっています。「波状雲」と言い、空気中に発生した波(正確には重力波)によってできる雲のことです。この波が上昇するところで雲ができ、波が下降しているところでは雲が消えてなくなります。
写真4 旗雲(はたぐも)
「旗雲」にも出会いました。左側がエベレストから、右側がローツェのそれぞれ山頂から雲が右側にたなびいています。これは風が強いときにできる雲で、風は左から右に吹いています。このような雲が出ているときは登頂することはできません。日本でも独立峰を中心に強風時に見られることがあります。
エベレストで見られた雲や光学現象を2回にわたってご案内してきました。次回からは、再び日本の空の百名山をご紹介していきます。
文、写真:猪熊隆之