空の百名山連載四国

第25回 海と山脈に浮く雲 天気お知らせ 飯野山(香川県)

山に登ることは空に近づくこと。

飯野山(いいのやま)は標高422メートル、讃岐平野にそびえる円錐状の山で、その姿から讃岐富士とも呼ばれています。標高は低いものの、讃岐平野にポツンと聳えているので、登るにつれて展望が開け、空を眺めるのにもふさわしい山と言えるでしょう。また、街に近いので山に登るというよりも散歩をするといった感覚で登られている方も多いようです。私が訪れたときも「毎朝、登っていますよ。」という元気な年配の女性がいらっしゃいました。

おむすび型の飯野山(中央左寄り)

飯野山がある讃岐平野は、西日本でもっとも降水量の少ない地域です。南側に讃岐山脈がそびえ、瀬戸内海を挟んで北側には中国山地、東側には紀伊水道を挟んで紀伊山地があるため、太平洋や日本海からの湿った空気はそれらの山に堰き止められて山を越えられないことや、平地や海が広がるため上昇気流が起こりにくいことなどから雨が少ない場所になっています。そのため、古くから農業用のため池があちこちに造られてきました。

飯野山から空を見るポイントは二つあります。ひとつ目は瀬戸内海に浮かぶ雲。海の上を風が吹くと、水蒸気の供給を受けて湿った空気となり、それが瀬戸内海の島にぶつかると上昇させられて雲を作ります。特に、西風が吹くときは、空気が瀬戸内海を長く吹き抜けるため、水蒸気の補給をたっぷりと受けるので雲ができやすくなります。瀬戸内海に浮かぶ雲、特に西側にある雲を見ることで、その後の天気の変化を知ることができるのです。

瀬戸内海に浮かぶ雲

もうひとつは、南側に連なる讃岐山脈にかかる雲です。湿った空気は太平洋から、つまり南側の高知県や徳島県の方角から入ることが多くなります。この湿った空気は、三嶺から石鎚山脈にせき止められることが多くなりますが、これら2つの山脈の間は標高が低く、湿った空気が讃岐山脈にまで入ることがあります(図1参照)。このとき、湿った空気が讃岐山脈で上昇し、雲が発生します。

図1

讃岐山脈の上に浮かぶ雲や、山にかかる雲を見ることで、その後の天気を予想することができます。雲が次第に増えていくときや、レンズ雲が見られるとき、山を越える滝雲が見られるときなどは天候悪化の前兆です。

讃岐山脈上空に浮かぶ雲

〇おすすめコース

 飯野町登山口から野外活動センターを通るコースがおすすめ。山腹を巻くようにぐるっと一周しながら山頂を目指します。急な坂がほとんどなく、見晴らしが良い場所が多くて東西南北それぞれの空を見ながら歩けるので空見にはピッタリのコースです。

https://bell3.blog.jp/archives/31519589.htmlより
図を使うには許可が必要

 その他にも香川県には空見にふさわしい、気軽に登ることができる山が沢山ありますので、いくつかご紹介します。

稲積山(404メートル)

 山頂の本宮には「天空の鳥居」と呼ばれる鳥居があり、海を見下ろす絶景が広がります。

天空の鳥居から瀬戸内海を見下ろす

五岳山(481メートル)

香色山,筆ノ山,我拝師山,中山,火上山の総称で、時間や体力に応じて全山を縦走したり、ひとつの山だけを往復したりと、自分の都合にあわせてコースを選ぶことができます。基本的に尾根上を行くので、所々空が開けており、岩場があるなど変化に富んだ山歩きを楽しむことができます。

紫雲出山(しうでやま 352メートル)

浦島太郎が玉手箱を開け、出た白煙が紫色の雲になって山にたなびいたため、その名がついたと言われている素敵な伝説を持つ山です。瀬戸内海に浮かぶ島々、海に沈む夕陽が素晴らしい絶景の山で、空も360度開けています。春は桜、初夏はアジサイなど花の山としても知られています。

紫雲出山山頂からの瀬戸内海に沈む夕陽