空の百名山連載北陸・信越

第26回 山にかかる雲 天気が崩れる合図 五頭山(新潟県)

山に登ることは空に近づくこと。

新潟県阿賀野市の五頭(ごず)連峰最高峰菱ヶ岳974メートル)は、約1,200年前に弘法大師によって開山され、五つあるピークがその名の由来となっています。蒲原平野(越後平野)や新潟市内からも望むことができ、春から秋にかけて、子供から大人まで登山者が絶えることのない、新潟市民や新発田市民、阿賀野市民に親しまれている山です。

新発田市からの五頭連峰

五頭連峰は、日本海から吹き付けてくる湿った空気が最初に出会う山です。日本海からの湿った空気が入らなかったり、日本海と反対の方角(南~南東~東)から風が吹いたりしたときは、五頭連峰に雲がかかることはなく、新潟市や新発田市など蒲原平野の天気も崩れません。日本海から湿った空気が入り始めると、五頭山に雲がかかります。日本海から入ってくる水蒸気が山にぶつかって上昇して冷やされるからです。さらに、湿った空気が多くなってくると、山にかかる雲は厚みを増して高度を下げていきます。こうなると、平野部でも間もなく雨が降り出します。

昔の人は、このように五頭連峰にかかる雲を見て天気を判断していました。

図1 日本海からの湿った空気による雲の発生

 五頭連峰が空を見るのに良いのは、東側にドンと鎮座する飯豊連峰、南側には越後山脈の山並みがあるのに対し、西側から北側には蒲原平野越しに日本海、そして佐渡や粟島までを望む絶景が広がるからです。この地域で天気が崩れるのは、日本海の方角から雲がやってくるとき。そのため、日本海の方角に空が開けている五頭連峰は、その後の天気変化を予想するのにはうってつけなのです。

 また、初夏から初秋にかけて、南風や東風が吹き降りるときには飯豊連峰に雲がかかり、ときには山を雲が流れ落ちる、幻想的な滝雲が見られることもあります。そんなときは 山から吹き下りるうちに空気は乾燥して高温となっていくため、平野部の猛暑を予想することができ、身をもってフェーン現象の仕組みが理解できることでしょう。

図2 フェーン現象が発生するときの天気

〇おすすめコース

 空見を楽しむなら、五頭連峰の最高峰、菱ヶ岳から主峰の五頭山(912メートル)へと縦走するコースがおすすめです。縦走路から時々、視界が開けて飯豊連峰や日本海の展望が広がります。

菱ヶ岳~五頭山の縦走路から望む残雪の飯豊連峰

 また、縦走する時間がなかったり、体力に自信がないときは、三ノ峰コースがおすすめです。この場合、山頂より前一ノ峰の方が展望が良いので、そちらで空を見る時間を取る方が良いでしょう。

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