空の百名山連載中国

第33回 見下ろせば谷間を流れていく雲~蒜山三座(岡山県・鳥取県)~

山に登ることは空に近づくこと。

蒜山(ひるぜん)は、岡山県と鳥取県の県境に位置し、日本海と瀬戸内海との分水嶺(ぶんすいれい)となっています。蒜山という名前がつくピークは上蒜山(かみひるぜん1,202m)、中蒜山(なかひるぜん1,123m)、下蒜山(しもひるぜん1,100m)の3つあり、これらを合わせて蒜山三座と呼びます。私が初めて訪れたのは、真ん中のピーク、中蒜山です。

写真1 上蒜山(左)と中蒜山(右)

 

蒜山は、日本海と直線距離で20kmと少しと、稜線からも遠望することができる距離にあるので、日本海側からの湿った空気の影響を受けやすく、日本海から風が吹くときは、霧に覆われることが多くなります。そのようなとき、山を越えると下降気流により雲は消えて、岡山県側の蒜山高原は晴れていることが多くなります。まさに、山によって天気が変わることを実感できる山と言えるでしょう。

 

写真2 蒜山を挟んで北側では霧、南側では青空が広がる様子

 

蒜山高原は、ジャージー牛で有名な酪農地帯になっていて、陽が当たると田園地帯が鮮やかに輝き、何とも美しい光景を見せてくれます。

 

写真3 陽光に輝く田園地帯。蒜山高原は酪農で有名

また、南からの湿った空気も南側にある中国山地や、瀬戸内海を挟んで横たわる四国山地に遮られるので、比較的日照時間の多いエリアになっています。

 

一方、冬型の気圧配置が強まったり、上空の寒気が強っかたりするときは、雪雲がこの山を越えて蒜山高原にも大雪を降らせることがあります。また、蒜山は標高が1,100~1,200m前後しかなく、蒜山とその東側にある津黒山との間や、蒜山とその西側にある皆ヶ山(みながせん)との間も標高700mを下回る鞍部(あんぶ、へこんでいる場所)になっています。北風が吹くときには、これらの低い場所を日本海から流れてくる雲や水蒸気が通り抜けていき、それが蒜山高原の南部で衝突して雲を作ることがあります。

 

図1 日本海から入る湿った空気の通り道

三平山(みひらやま)と大山(だいせん)から蒜山に連なる山並みとの間が大きな谷間になっており、そこを国道482号線が通っていますが、西から北西風が吹くときには、この谷間を日本海からの雲や水蒸気が通り抜けていき、その様子を山頂付近から見下ろすことができます。

 

写真4 風と風が衝突することによってできた入道雲

 

〇おすすめコース

時間と体力に余裕があれば、蒜山三座を縦走するのがおすすめです。縦走することによって、風向きや風の強さの変化を肌で感じることができます。時間がないときは、空見をするには上蒜山がおすすめです。西側の空が三座の中でもっとも開けているからです。ただし、山頂付近は樹林帯のため、展望はあまり良くありません。山頂で寝っ転がって空見を楽しむのでしたら、下蒜山がもっともおすすめです。

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