山に登ることは空に近づくこと。
米山(993m)は、新潟県の上越地方と中越地方の境界に位置する霊峰で、日本三大薬師の一つとして知られています。
私はずっとこの山に恋焦がれて来ました。それは、長野県茅野市の自宅から故郷の新潟県村上市に行くたびに、頚城平野の奥に聳えるこの山を見てきたからです。
写真1 柏崎市郊外から見た米山
米山は、日本海から直線距離でわずか5kmほど。それだけに、日本海からの季節風の影響を強く受けます。季節風が吹く冬は、その姿を見ることができる日は少ないのですが、その分、晴れた日の荘厳な姿と山頂からの眺めは素晴らしく、冬の登山も人気があります。
逆に、太平洋側から風が吹くときは、関東甲信地方では天気が悪くなりますが、米山など新潟県側の低山では越後山脈や三国山脈で雨雲がせき止められるので、天気が良くなります。
写真2 中腹付近のブナ林
私が米山を訪れたのは、10月末。自宅に帰る途中で時間がなかったので、もっとも短い水野林道登山口から往復しました。登り始めから赤、だいだい、黄色に色づいた木々が迎えてくれました。どこを見ても絵になる眺めです。
しばらくすると、ブナの美しい森になり、上に行くにつれて葉が黄金色に染まっていきます。避難小屋から先は尾根道になり、左右に絶景を眺めながらの登りになります。
そして、山頂からは360度の大パノラマ。眼下には北陸自動車道の米山サービスエリア。「いつもあそこから見上げていたんだなぁ。」と思うと感無量です。日本海の向こうには佐渡島が見えます。日本海には全く雲がないのに、大佐渡山地は雲がかかっていて、平地(海)と山との天気の違いについて身をもって感じることができました。
写真3 日本海と佐渡島。佐渡の山には雲がかかっている。
日が陰ったので、上を見上げるとポッカリと、綿のような雲が浮かんでいます。これは日本海から運ばれてきた水蒸気が米山の斜面で上昇して冷やされることでできる雲です。
西や南西側の空を見ると、登山口の展望台では見えていた妙高山や三国山脈が雲に覆われていました。雲の上端がモコモコした形になってきています。大気が不安定になってきて雲が少しやる気を出してきているようです。
この日はいいお天気でしたが、天気が崩れてくるときは日本海から接近してくる雨雲や雪雲が見えることでしょう。
天気が崩れても山頂に避難小屋があるのは心強いです。あまりにも素晴らしい山頂だったので、下山しようとしてやめるということを2、3回繰り返しました(笑)。登って感じたことは、「今まで何で登らなかったんだ!」
写真4 山頂から紅葉に染まる山並みを見下ろす
〇おすすめコース
空見をのんびり楽しむのであれば、あるいは体力に自信がなければ、水野林道登山口からの往復がおすすめ。もっとも登山者の多い太平コースや、もっとも標高差が大きく、距離も長い谷根コース、下牧ベースという立派な山小屋がある下牧コースも気になりますね。個人的には、朝晩の絶景を楽しめる山頂で避難小屋泊の1泊2日に挑戦してみたいです。