上空を吹いている偏西風(へんせいふう)の影響で、日本付近は西から天気が崩れ、西から回復することが多くなります。そのため、西側の空を見ると、その後の天気の変化が分かります。また、日本海側の山では、日本海から天候が変化することが多いため、日本海側の空を見ることが大切です。
一方、台風や前線が南海上から北上するときは、南から天候が変わっていきます。この日(2021年9月30日)もそんな一日でした。今日の雲の移り変わりを見ていきましょう。
まず、現れたのは青いカコミ線の中にある「すじ雲(別名巻雲)」です。雲の中でもっとも高い所に浮かんでいる100%氷の粒でできている雲です。次に白いカコミの中の「うろこ雲(別名巻積雲)」と緑のカコミの中の「うす雲(別名巻層雲)」。西から低気圧が近づくときは、うす雲が西の空から広がっていきますが、今回は台風が南から北上してきたということで、南側(写真の右手)から広がってきました。その次に広がってきたのは「ひつじ雲(高積雲)」。低気圧や温暖前線が接近するときは、この雲ではなく、「おぼろ雲(高層雲)」が広がることが多いのですが、台風や発達した低気圧が接近するときは、ひつじ雲が先に現れることが多くなります。
特に、写真2のように、全天に広がった後、低気圧や台風がある方向の空がおぼろ雲に変わっていくときは天気が崩れていくことが多くなります。また、台風や発達した低気圧が遠方にあるときは、空気中に波が生じることが多く、それが遠くの空にまで伝わって波状雲(はじょううん)を形成することが多くなります。
その後、ひつじ雲がおぼろ雲に変わっていき、その下には塊状の「わた雲(別名積雲)」が現れてきました。わた雲は青空に浮かんでいると、綿のように白く見えますが、曇天の元では暗灰色に見えます。さらに、写真の右手の方(南側)には、もっと暗い感じの「雨雲(別名乱層雲)」が現れ、山には「きり雲(別名層雲)」がかかってきています(白いカコミの中)。こうなると、雨が降り出すのも間近です。
ここで、この日の天気図を見てみましょう。台風が本州の南海上にあり、北東へ進んでいます。台風を取り巻く雲が南海上から次第に近づき、本州の南岸から内陸へと広がっていきました(画像1~2)。
このように、台風が南から北上するときは、南から天気が悪化していくので、南の空を確認しましょう。
今回も、うす雲、うろこ雲→ひつじ雲→おぼろ雲→雨雲、きり雲(山)と変化していき、雨が降りだしました。
天気がどちらから変化するのかを天気図などから確認しておくと、見るべき空の方角も分かります。
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
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