今回は、東高西低型で天気が崩れていくときの雲についての解説です。天気が崩れていくときのパターンは大きく分けて、Ⅰ.温暖前線が接近してくるとき(低気圧の北側に入るとき)とⅡ.寒冷前線が接近してくるとき(低気圧の南側に入るとき)の2つがあります。今回、ご紹介するのは、この中間型、あるいはⅠに近い中間型と言えるでしょう。
ⅠとⅡのパターンについては、過去のブログをご参照ください。
Ⅱ:https://sangakujro.com/%e9%9b%b2%e3%81%8b%e3%82%89%e5%b1%b1%e3%81%ae%e5%a4%a9%e6%b0%97%e3%82%92%e5%ad%a6%e3%81%bc%e3%81%86%ef%bc%88%e7%ac%ac8%e5%9b%9e%ef%bc%89/
5月になると、日本の東海上で高気圧が発達することが多くなります(近年は3月中旬頃から発達することもしばしばあります)。そうなると、日本の東海上に高気圧、中国大陸や東シナ海に低気圧という、東の方で気圧が高く、西の方で低いという「東高西低型」の気圧配置になることが多くなります。
東高西低型のときは、南寄りの風が吹くことが多くなります。これは、高気圧から吹き出す風が地球の自転の影響で右寄りの変えられるため、高気圧の周辺では時計周りに風が吹くからです(図1)。また、中・上級者の方は、尾根の張り出しにも注目すると良いですね。ここは高気圧と同様、下降気流が起きる場所で、尾根から両側に向かって風が吹き出すところなので、尾根の北側では南風が、尾根の南側では北風が吹きやすくなります。
東高西低型になると、日本付近は南風が吹く場所が多くなり、太平洋からの湿った空気が入る太平洋側の山岳では天気が崩れることが多くなります。一方、日本海側の山岳では天気の崩れが遅れ、低気圧や前線が接近した途端、天候が急激に悪化することが多くなります。
ヤマテン事務所のある八ヶ岳周辺は内陸にあるため、太平洋側と日本海側の中間の天気変化になりました。それでは、早速ヤマテン事務所から見た空の変化を解説していきます。
Ⅰのケースと同様に、初めはすじ雲が現れることが多くなります。Ⅰの場合は、ゆっくりと、うす雲(巻層雲)に変わっていき、西の空から薄雲が広がって全天を覆うようになってくると、半日後に天候が崩れていくことが多くなりますが、東高西低型では天候変化が早く、ひつじ雲(高積雲)が同時に現れています。ひつじ雲は気流が乱れているときにできやすいので、その後の天候変化が大きくなる可能性があります。
その後、南西の空から薄雲が広がっていき、さらに南西側の奥の方にはおぼろ雲が広がってきました(写真2)。Ⅰの場合は、西から広がってくることが多いですが、東高西低型では南西側から広がっていくことが多くなります。さらに、Ⅰの場合は、おぼろ雲が全天に広がってくるときに、わた雲が現れることが多くなりますが、東高西低型では、それより早く、うす雲が広がり始める段階で、わた雲が現れることが多くなります。ただし、わた雲が現れるのは、太平洋側など南や南西側から湿った空気が入りやすい場所になります。諏訪地域では南~南西風が吹くと、天竜川に沿って太平洋からの湿った空気が入ってくるので、わた雲が守屋山上空ででき始めています(図3)。
薄雲(巻層雲)が全天を覆うようになった頃、Ⅰのときと同様、西の空からおぼろ雲が広がってきます。その移り変わりはⅠのときより早くなります。また、おぼろ雲より高度が低い所にひつじ雲(高積雲)のレンズ雲が現れていました。レンズ雲が現れることが多いのも、東高西低型の特徴と言えるかもしれません。この辺りはⅡのパターンと似ています。
おぼろ雲が全天を覆ってくる頃、八ヶ岳上空にもわた雲(積雲)が現れてきました。写真4では、左側の北八ヶ岳の方で、積雲が厚みを増していて、右側の南に行くほど雲が少なくなっています。これは高度の低い所では南南西風が吹いているからで、天竜川からの湿った空気があたる蓼科山~北横岳で雲が厚くなっている一方、南アルプスが南南西側にある南八ヶ岳では湿った空気が入りにくいので、雲ができにくくなっているのです。
いずれにしても、おぼろ雲から太陽が透けて見えなくなり、わた雲が現れてくると雨が降り出すのは時間の問題になってきます。
このように、雲変化のパターンを覚えておくと、あとどの位で雨が降りそうなのかが分かります。ただし、太平洋側の山や日本海側の山では八ヶ岳など内陸の山岳と天候変化が異なるので、注意が必要ですね。日本海側のパターンは、第168回をご参照ください。
第168回
https://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/ee8ef57ea82d22d959b8d90f8455662d
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
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