先日、八ヶ岳上空にレンズ雲が現れました。しかも三重のレンズ雲です。レンズ雲は、風が山を越える際に生まれる上昇気流が上空や山の下流側に伝わって発生する雲で、山によって発生する空気の波を山岳波と呼びます。レンズ雲の他に吊るし雲や笠雲が山岳波によって発生する雲です。山岳波はある程度、風が強くないと発生しないことから、これらの雲が出たときは、山の上では強風となる恐れがあります。
さて、レンズ雲はひとつしか現れないこともありますが、全天に数が増えていくときや、写真のように二重、三重になっていくときは風が益々強まっていき、高い山では天気も悪化することが多くなりますので、覚えておきましょう。
ちなみに、今回の三重の雲、一番下は平均的なレンズ雲(八ヶ岳の山脈に沿って波が発生しているため、長めのレンズ雲)ですが、その上の雲は面白い形をしています。雲の端がギザギザしていますが、これは雲が下降しながら蒸発している様子を表しています。雲の形がそれぞれ違うのは、雲が浮かんでいる高さが違うためです。レンズ雲は高さによってさまざまな雲の種類からできています。今回の写真のレンズ雲では、一番下の雲と真ん中は高積雲(こうせきうん)によるレンズ雲、一番上は巻層雲(けんそううん)によるレンズ雲になります。
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。