観天望気講座講座

猪熊隆之の観天望気講座198回 車窓からアルプスの天気を予想しよう ~特急あずさ・中央道編~

東京方面から八ヶ岳や中央アルプス、北アルプス方面に向かうとき、中央線の特急「あずさ」や中央高速道路を利用する方が多いと思います。実は、登山口に向かう道中の車窓からでも分かることが沢山あります。今回は、冬型の気圧配置が強まるときの天気です。

冬になると、日本列島の東側や北側に低気圧、中国大陸に高気圧がある冬型と呼ばれる気圧配置が多くなります。冬型と言えば、日本海側では雨や雪、太平洋側では晴れという天気が代表的ですが、冬型の気圧配置が強まると、北アルプスや御嶽では猛吹雪となり、中央アルプスや八ヶ岳、南アルプス北部でも吹雪となることがあり、稜線では暴風が吹き荒れます。したがって、そのような天気のときは、森林限界を超えるのは危険です。

図1 冬型が強まるときの気圧配置

冬型が強まるかどうかは、予想天気図で確認するのがおすすめです。図1のように、等圧線が日本付近でびっしりと走り、間隔が狭いときは冬型が強いときです。

冬型が強まるときは、特急「あずさ」では勝沼~塩山間で左手に見える南アルプスの山並みに注目します。中央道では、一宮御坂から甲府昭和IC間でほぼ正面に見える南アルプスに注目します。

写真1 塩山付近から西の方角の空

写真1では晴れている日に見えるはずの間ノ岳や北岳、鳳凰山が雲に隠れています。このような雲に白根三山や鳳凰山が覆われているときは、南アルプスの北部や八ヶ岳、中央アルプスでは吹雪いており、稜線では強風が吹き荒れています。北アルプスでは恐らく猛吹雪となっていることでしょう。

写真2 鳳凰三山~甲斐駒ヶ岳にかかる雲

韮崎を過ぎると左手に鳳凰三山が見えてきますが、写真2のように、山に雲がかかっているときは冬型が強いか上層の寒気が強い証拠です。いずれにしても山は吹雪いていると思った方が良いでしょう。鳳凰三山~甲斐駒ヶ岳でこのレベルだと、八ヶ岳や中央アルプスはもっと悪い天気になっているはずで、北アルプスは猛吹雪や大雪に見舞われることが多くなります。このようなときは、小淵沢付近から雪がちらつき、富士見駅付近では吹雪いていることもあります。

進行方向右側の席を取った場合には、八ヶ岳にかかる雲が参考になります。八ヶ岳にかかる雲から天気を推測する方法は、166回をご参照ください。

https://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/31e7d862c5b21b5c161766de111cb9ea

富士山はこのようなときでも晴れていますが、上層の寒気が強いときは、写真3のように、富士山の山頂付近にモクモクとした雲が出ていることがあります。このようなときは、関東平野でも午後、天候が急変する恐れがあります。実際、この日は午後から天候が急変し、都心でも初雪になりました。

写真3 富士山にかかる“やる気”のある雲

また、富士山で東側にたなびいている雲(旗雲 はたぐも)が出ているとき(写真4)は、暴風が吹き荒れている証拠です。このような日は晴れていても上部で行動することは非常に危険です。

写真4 旗雲が出ているときの富士山

車窓からの風景で、このように目的の山の天気が推測できます。ぜひ、活用して安全に登山しましょう。

文・写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

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