天気予報を見るときに、天気は見るけれど、風の強さや風向きについて確認していない方は多いと思います。実は、山の天気では風の強さや風向きがとても重要です。風の強さは、低体温症や突風による転滑落などのリスクにつながりますし、風向きは天気の変化に影響します。今回は、その風向きと天気の関係について、韓国岳での空見ハイキング(※)で見られた雲を元に解説していきます。
※空見ハイキングは、旅行会社でおこなっている、山の天気を学びながら登山を楽しむツアーです。空や雲の見方、風を読む方法などを学ぶことができます。
空見ハイキング(山の天気ハイキング)の情報は下記ページでご確認ください。
https://www.yamaten.net/workshop
写真1 午前中は快晴の韓国岳
写真2 午後になると、層積雲(そうせきうん、別名うね雲)が広がる
2月9日は、朝から韓国岳上空は晴れ渡り、霧氷に彩られた山の風景に見とれながら歩いていました。森林限界を超えると空が開けましたが、写真1のように遠くに(写真の奥の方)暗い雲の帯が見えるものの、他の所に雲はなく青空が広がっています。一方、午後になると写真2のように扁平型の塊状の雲が広がっていました。この雲は層積雲といい、北西の季節風が東シナ海を渡る間に、暖かい海面に触れて温められた海上の空気と、上空1,500~2,000m付近に流れ込んだ大陸からの冷たい空気によって、地上付近と高度約2km付近との狭い範囲で温度差が大きくなるときにできる雲です。東シナ海で生まれたこれらの雲は、上空を吹いている風によって流されていきます。
この日は、上空の風が午前中は北~北北西風、午後は北西~西北西風に変わりました。北北西風の場合、図1のように東シナ海からの雲は薩摩半島に入り、霧島連山や大隅半島にはかかりません。写真1の遠くに見える雲は、東シナ海から薩摩半島方面に広がる雲です。
図1 北北西風
図2 北西風から西北西風になると、霧島連山にも雲がかかるようになる
午後になると、風向が北西風~西北西風に変わり、東シナ海からの雲が霧島連山に向かうようになりました。それでは風向はどこで調べれば良いのでしょうか?気象庁などが発表する天気予報でも風向は発表されますが、地上の風向ですので地形の影響で上空の風向とはズレてしまうことがあります。そこでおすすめするのが上空1,500m付近の850hPa面の天気図です。
図3と図4は上空1,500m付近の風と気温の予想図です。風向はこの棒に羽根のようなものがついている記号で判断します。図5のように、羽根が出ている方角から風が吹いてくると判断してください。
図3 9日午前6時の上空1,500m付近の気温と風予想図
図4 9日午後3時の上空1,500m付近の気温と風予想図
図5 風向の調べ方
図3を見ると、朝6時の予想では九州南部では北から北北西風になっています。一方、図4の午後3時では北西から西北西風になっています。ちょっとした風向きの変化でこのように雲が流れ込む場所が変わり、天気が変わってきます。風向きや風の強さの変化は天気の変化につながります。時々、風の強さや向きをチェックしてみると天気の変化を早めに察知できるかもしれません。
文責:猪熊隆之