気象遭難は、日本海側の山で多く発生しています。その理由のひとつは、日本海側の山では天候が非常に変わりやすく、朝のうちは晴れていても、昼頃から風雨が強まったり、吹雪になったりすることがあるからです。そのようなとき、山麓の予報では悪天が予想されていなかったり、天気の崩れが小さい予報になることがあります。また、天気の崩れが予想より早くなることもあります。そこで、空を眺めることで、悪天の兆候をいち早く捉え、早めの避難行動につなげるための方法をお伝えします。
日本海側の山で、天候が急変するのは、日本海の方角に危険な雲が現れるときです。 このうち、もっとも多いのは寒冷前線が接近するケースです。前線にはいくつか種類がありますが、落雷や強雨(雪)、降雹など激しい気象現象をもたらすのは寒冷前線です。そこで、寒冷前線が接近するときの雲を覚えましょう。主に2つのパターンがあります。
1.真っ暗な雲が接近するとき
寒冷前線に伴う雲の特徴は、①真っ暗な感じの雲が帯状に連なっている(赤い破線)、②その雲の下に霞んだような、レースのようなエリアがある、③①の雲の上には、真っ白なソフトクリームのような、もくもくとした雲が見える(①の雲に隠れて見えないこともある) の3点です。
雲は厚いほど、また雲粒が密集している程、暗く見えます。雲が薄ければ、危険な雲ではありませんが、厚みがある雲は落雷や強雨をもたらす積乱雲(せきらんうん、別名雷雲)です。厚みがあるかどうかは、雲の隙間に③が見られるかどうかでチェックします。写真2のように、③が見られるときは厚みがある雲で、寒冷前線に伴う雲の可能性が高くなります。 また、②の部分は、雨が降っているエリアになり(降水雲と呼びます)、このエリアが近づいてくると、雨が降り出します。
2.帯状にモクモクとした雲が連なっている
日本海の方角に帯状のモクモクとした雲が連なっていることが良くあります(写真4の赤い破線)。この雲が左の方から右の方へと進んでいるときは問題ありませんが、奥から手前に進んでくるときは要注意です。
1のパターンや、2のパターンのような特徴を持った雲が日本海から接近するときは、すぐに落雷や強雨から身を守れる場所に避難することが大切です。
文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
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