空の百名山連載北陸・信越

第18回 日本海からの風 天気ころころ 雨飾山

山に登ることは空に近づくこと。

雨飾山(あまかざりやま)(1,963m)は、信越国境(長野・新潟県境)にそびえる双耳峰です。信州側からは分かりませんが、越後側の新潟県糸魚川市から見ると、山頂が2つに分かれていることが分かります。標高は2,000mに満たないですが、日本海からまともに風を受ける地理的な条件と、冬季の豪雪、布団菱(ふとんびし)と呼ばれる荒々しい岩壁を擁するため、高山的な雰囲気を漂わせています。

雨飾山には、昨年の秋、NHK BSの「にっぽん百名山」という番組で、下見と本番の撮影で計8日間ほど山中にいたこともあり、個人的に思い入れの深い山と言えます。本番の撮影は、紅葉の最盛期だったため、日に日に変わっていく木々の彩り、天気によって全く変わる山の色を全身で感じることができ、黄金色に輝くブナの黄葉に圧倒されたことを懐かしく思い出します。今もあのブナの森に飛び込んでいきたいくらいです(笑)。

写真1 山頂から笹平方面を見下ろすと、登山道が女神の横顔に見えると話題に

雨飾山の山頂に立つと、眼下に日本海と糸魚川の市街地を望めます。それだけ日本海に近いので、天候変化が激しい山です。日本海(北や北西側)から風が吹いてくると、海上を渡る間に水蒸気の補給を受けた空気が運ばれてきて、山の斜面で上昇して雲が発生します。そのため、山頂は霧に覆われてしまうことが多くなります。実際、私が登っているときも、日本海からの風が強まると、霧に覆われて視界が悪くなりました。

一方、南西~南東風のときは、北アルプスや本州中部の高い山が湿った空気の侵入を防いでくれるので、天気の崩れは小さくなります。稜線に立ったときに、風向きをチェックすると良いでしょう。風向きが変わるときは、天候が変化するサインです。

写真2 日本海からの湿った空気が雲を作る

空見(そらみ)ポイント

●雨飾高原キャンプ場

天候の変化が激しい雨飾山。小谷村側からの往復で7時間前後、糸魚川側からの往復で8時間前後かかります。空見をしながら歩くと、これより1時間前後多めに見ておいた方が良いです。このため、朝早く出発することが望ましく、ふもとの温泉やキャンプ場に前泊することをおすすめします。また、雨飾高原キャンプ場は、南側の空が開けており、空見ができるポイント。天気を崩す雲が現れないかどうかチェックしましょう。

●荒菅沢

ここでは風向きをチェック。上流側から弱く風が吹いていたら好天が期待できますが、下流側から吹いている場合は天気が崩れることが多くなります。

●笹平~山頂

稜線に出ると、風が強まることがあります。そのようなときは、笹平の手前で防寒具を着ましょう。また、日本海の方角に天候を崩す雲がないかどうかや、風向きをチェックします。日本海からの風向きになるときは、その後の天候変化に注意しましょう。