空の百名山連載

第11回 美ヶ原・三峰山 ~冬山の厳しさ学べる最適な環境~

樹氷と広大な雪原――。

北アルプスの展望を気軽に楽しめる山として有名な美ヶ原(うつくしがはら、標高2,034m)。車を使えば、霧ヶ峰(車山)とともに百名山でもっとも手軽に登れる山と言えます。この山の魅力はやはり冬。山頂に建つ王ヶ頭ホテルや、標高2千メートル近い高原にある山本小屋を利用すれば、冬でも宿泊者は、宿の送迎車で入れます。歩くことが難しい方でもスノーモービルで、真っ白な雪原が広がる台地を駆けめぐることができます。

美ヶ原の魅力は広大な雪原を思い思いに歩けること。

雲や風の変化から天気を学ぶハイキングを過去に何度も行ってきたのも、森林限界を越えた高山と同じような環境にありながら、近くに山小屋や樹林帯など雪や風から身を守れる所があるので、比較的安全に天候が荒れたときの冬山の厳しさを学ぶことができるからです。これから冬山を始めようとする登山者が、気象リスクを学ぶのに適した場所と言えるでしょう。

美しい朝焼け

好天に恵まれた2015年のツアーは2日間ともに快晴で風も弱く、冬季としては極めて珍しい気象条件でした。この年は、近年では珍しいほど積雪が多く、パウダースノーを心ゆくまで満喫することができました。振り返ると自分たちのトレース(足跡)が雪原の中にずっと続いています。その向こうには富士山が鎮座しており、トレースがまるで富士山まで続いているかのようです。一方、松本盆地をはさんで眼前には白銀に輝く北アルプスが屏風のように続き、その迫力に圧倒されます。

美ヶ原からの槍穂連峰

一方、美ヶ原の南東に位置する三峰山(みつみねやま、標高1,887m)。日本海と太平洋の分水嶺 (ぶんすいれい) 上にあり、ビーナスライン沿線の中では、夏でも訪れる人が少ない比較的静かな山です。

17年の真冬に訪れました。樹氷が美しい樹林帯を抜けると、見事な雪稜(せつりょう)が続いています。その景観は雄大で、真冬の立山連峰をほうふつとさせます。また、冬季は零下20度近くに下がることもあり、厳しい気象環境であることから、美ヶ原とともに光学現象が見られやすい山とも言えます。このときも、ブロッケン現象はもちろん、太陽注(サンピラー)、ダイヤモンドダストなど激レアな現象まで見ることができました。

三峰山への登り。見通しの良い尾根道が続く。

実は、この三峰山。山頂には「神の椅子」と言われる大岩があって、「恋人同士で訪れると恋が成就する」と言われています。ぜひ、恋人同士で訪れてみてはいかがでしょうか?

三峰山で見られたブロッケン現象
三峰山で見られたサンピラー(太陽柱)
広大な雪原。最近はここまで積雪があることが少なくなった。