空の百名山連載北陸・信越

第24回 長野市民に親しまれる絶景の裏山 飯綱山(長野県)

山に登ることは空に近づくこと。 

今回は、長野市の背後に聳え、北信五岳のひとつ、飯綱山(1,917m)を取りあげます。善光寺平から直接、聳え立つその優しい山容は、麓の人々の暮らしを見守っているかのようであり、古くから信仰の対象ともなってきました。地元の子供たちの学校登山の舞台ともなってきた山で、山腹にはスキー場があり、長野市民にとっては憩いの山でもあります。

写真1 この年は大雪で、山麓でもご覧の通りの積雪量

飯綱山は、友人から勧められて気になっていた山です。空や雲を見て天気を予想したり、雲を愛でる登山を旅行会社で企画し、ツアー前に友人と偵察に行きました。その年の信越地方は近年稀に見る大雪でラッセル(雪をかき分けて進むこと)が深く、スキーで楽々歩を進める彼を尻目に、腰まで雪に埋まりながら、大好きなラッセルを満喫しました。

戸隠スキー場のリフトを乗り継いで瑪瑙山の山頂まで行けば、パウダースノーが待っています。一旦鞍部まで下り、そこから300m弱の標高差を登れば、山頂の一角に出ます。振り返れば、白銀に染まる北アルプスの山並みが広がり、戸隠高原を挟んで対峙する荒々しい戸隠連山から端正な高妻山へと百名山が連なります。眼下には長野市街地の建物が手に取るような近さに見えます。善光寺平を挟んで対岸には、志賀高原から四阿山など信越国境の山並みが聳え、まさに360度の大展望です。

写真2 北アルプスの絶景をバックに山頂付近を歩く

ただし、こうした晴天にめぐり合うためには、天気を少し勉強して、高気圧に覆われるような日を狙いたいものです。あるいは等圧線が東西に走向する形の冬型(図1)のときもチャンスです。このようなときは、西風になって北アルプスが雪雲の侵入を防いでくれるため、飯綱山は晴れることが多く、北アルプスにかかる雪雲と、その雪雲が山を越えて弱まっていく様子を観察できるので、天気の勉強をするには良い条件です。

図1 等圧線が東西に走る形の冬型

逆に等圧線が南北に走向していて、線の間隔が狭い(本州で4本以上線が走っている)ときと(図2)には、飯綱山では吹雪になります。こんな日は避けた方が良いでしょう。

図2 等圧線の間隔が狭いときの冬型

飯綱山は里から近く、登山口まで楽に行けること、妙高・火打など頚城山塊の山で雪雲が食い止められることが多いため、そこまでの豪雪ではなく、晴天率もこれらの山に比べれば高いこと、それでも積雪はたっぷりとあるのでラッセルの訓練ができ、雪と戯れながら山を楽しめること。山頂直下まで樹林におおわれていることから、稜線で天候が急変してもすぐに安全地帯まで下山できることなど、冬の空見におすすめの山です。

写真3 童心に帰って雪と戯れる

〇おすすめコース

 リフトを乗り継いで瑪瑙山から入山するコースがおすすめです。時間がないときは、ここから山頂までの往復でも良いですが、ちょっと物足りないかもしれません。時間に余裕があるときは、瑪瑙山との鞍部まで下った後、瑪瑙山に登り返さずに、右側から巻いていき、戸隠スキー場の脇を下る方法と、スキー場北側の尾根に登り返してから尾根上を下る方法とがあります。後者のコースは、降雪後だとラッセルがありますので、体力に自信がある方やラッセル好きの方におすすめです。