山に登ることは空に近づくこと。
秋田駒ケ岳(1,637m)は、男女岳(おなめだけ・1,637m)と男岳(おだけ・1,623m)、女岳(めだけ・1,512m)など、火山で形成された複数の山の総称です。現在も活動を続ける活火山で、南部カルデラと北部カルデラという2つのカルデラ(火山による山の崩壊や陥没によってできた大きな窪地)があり、その中に男女岳、女岳など比較的新しい火山が点在しています。
写真1 不思議な火山地形の小岳
大きなくぼ地と、その中にボコボコと地中からはい出してきたような山々の独特な景観が面白く、その姿は火山の成り立ちを私たちに伝えてくれるとともに、さまざまな伝説も生まれています。また、高山植物や紅葉の美しさでも知られています。
写真2 錦織に染まる横岳付近からの岩手山
空を見るうえでも、とてもユニークな山です。奥羽山脈に位置するため、太平洋と日本海の分水嶺(ぶんすいれい)となっており、天気の境界にもなります。
夏場の日中は、岩手県側の北上川に沿って入ってきた水蒸気が山の斜面で上昇し、雲を作ります。カルデラの外輪山となる横森山~横岳~横長根は岩手県側からの雲がかかって日中は霧に覆われることが多く、霧のシャワーを浴びたり、ブロッケン現象を眺めるなら、この尾根を辿ると良いでしょう。
一方、男岳、女岳、小岳などカルデラ内のピークは気流を乱すため、雲が渦を巻いていたり、複雑な流れになったりします。これらを高みの見物したいというのであれば、男岳~横岳の稜線や大焼砂辺り、男女岳山頂で観察するのがおすすめです。
写真3気流が乱れてできる「へ」の字の雲
秋田駒ケ岳は、日本海からの西よりの風が強まることが多く、阿弥陀池付近は男女岳と男岳の間の鞍部(あんぶ)にあたるため、風の通り道になっています。強風時は阿弥陀池に入る手前で天候判断をすることが重要です。また、低体温症などの症状が疑われるときは、阿弥陀池小屋に避難しましょう。
他にも、大焼砂や横岳の北東側など、いくつか強風帯があるので強風が予想される気圧配置のときは、これらの場所は避けた方が無難です。
写真4 秋田駒ケ岳屈指の強風帯、阿弥陀池
〇おすすめコース
花を見るならムーミン谷、紅葉は9月下旬であれば横岳周辺、10月上旬であればムーミン谷がおすすめです。空を見るのにおすすめなのは、八合目から阿弥陀池を経て男女岳に登頂し、横岳、大焼砂を経由して国見温泉に下りるコース。車で来られる場合は、横岳から尾根を通って八合目に周回するコースが良いでしょう。目的や天候によって、色々なコースを選ぶことができるのも秋田駒ケ岳の魅力。私は、秋田駒ケ岳2回目ですっかり秋駒中毒になっています。次はチングルマ咲くお花の季節にムーミン谷を訪れたいと思っています。